この夏も、蜂に刺されて重症になっている方が多いので、今回は蜂毒アレルギーについて調べてみました。
ハチ毒アレルギーとは、ハチに刺された時にハチ毒が体内に入って起こるアレルギー反応のことで、ときにアナフィラキシーを起こすことがあります。日本ではハチ毒アレルギーによるアナフィラキシーショックによって毎年30人前後の人が死亡しています。特に、養蜂家や農林業に従事している人で、ハチ刺し事故が多くみられ、日本で森林管理局職員に対して行われた調査では、90%以上がなんらかのハチ刺し事故を経験しているとのことです。
ここでアナフィラキシーショックについて簡単に説明します。よくみられる症状として、じんましん、呼吸困難、腹痛、嘔吐、下痢、および血圧低下を伴うショック等があげられます。これらの症状は、人によって、またアレルゲンの量等によっても異なります。じんましん等の皮膚症状は、はじめにみられることが多く、また9割以上の患者さんに出てくるといわれています。アナフィラキシー症状がでる時間はアレルゲンによって異なります。ハチ毒アレルギーによるアナフィラキシーの症状は、主にIgE抗体を介する I 型アレルギー反応(即時型)によって引き起こされます。皮膚からハチ毒等のアレルゲンが入り、早いときにはハチに刺された後、数分〜15分以内には症状がでてきます。それに対し、食物の場合は口から食べて胃や腸で消化・吸収されてからアレルゲンになるため、食後30分〜1時間くらいはかかります。アナフィラキシーで恐いのは、ショック等により死に至ることがあることです。その多くは、喉のはれや痛み等を伴う気道閉塞、不整脈による心停止、重篤な酸素欠乏状態、血圧低下等が原因になっています。
ヒトを刺すハチの種類は、主にミツバチと、スズメバチ科のスズメバチおよびアシナガバチです(図)。症状の発現は、ハチ毒に含まれるアミン類やペプチド類といった物質が関わっています。ハチ毒アレルギーの症状は、局所のはれからアナフィラキシーショックまできわめて多彩です。ハチ毒にアレルギーの人でなければ、ハチに刺されても強い痛み、かゆみ、発赤、はれといった局所症状があらわれるのみで、通常3日間ほどで消失します。しかし、ハチ毒アレルギーの人では、きわめて強い反応が起こり、嘔吐、寒気、全身のじんましんといった全身症状(図)から、呼吸困難や意識障害などのショック症状があらわれ、時には死に至ることもあります。アナフィラキシーがあらわれるのは、通常、刺傷後15分以内ですが、症状が早くあらわれる時ほど重症化する傾向があるといわれています。初めてのハチ刺し事故でもアナフィラキシーを起こすことがあります。また、前回刺された時は局所症状でおさまっていたとしても、再度のハチ刺し事故でアナフィラキシーが起こることがあります。特に、前回のハチ刺し事故の時に刺されたところのはれが大きく広がり、すぐにひかないで数日間続いたような場合には、その危険性が高いといわれています。いずれにしても過去にハチ刺し事故の経験がある人は、一度かかりつけの医師に相談し、自分が蜂アレルギーを持っているかどうか、検査して知っておきましょう。スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチの三種類の蜂の抗体検査が、病院でやってもらうこともできます。 ハチ毒に対する、血液中の特異的IgE抗体価というものを検査するそうです。 蜂に刺されたら、1ヶ月後くらいに検査するようにしてください。それよりも速いと、まだ抗体が検出できないことがあるようです。
ハチ刺し事故を回避するために、屋外での作業や山歩きをする際などは、長そで、長ズボン、手袋などを着用し、肌の露出を避けるようにしましょう。また、ハチは黒い色や甘い臭いに誘われる性質があります。香水や黒い色の衣服は避ける方が無難です。ハチ刺し事故に備えてアレルギー体質の人や以前ハチに刺されたことのある人は、ハチ刺し事故には特に注意が必要です。なかでも、野山での作業をする機会の多い人は、万が一のハチ刺し事故に備えて自己注射用アドレナリン注射液を常に携帯する等の対策をとることが望ましいでしょう。一度かかりつけの医師に相談されることをお薦めします。
ハチに刺された場合は、ハチの毒針が残っていたら直ちに取り除いてください。また、ハチ毒吸引器をもっている場合はハチ毒を吸い出してから、患部を冷やします。手足を刺された場合は心臓に近いところを縛るなどの処置もあわせて行います。腫れた患部に抗ヒスタミン薬などの薬を塗り、医師から指示されている場合には内服用の抗ヒスタミン薬を服用します。また、アナフィラキシーを起こした場合は、自己注射用アドレナリン注射液を投与する必要性も生じます。これらの薬剤の投与については、医師の指示に従ってください。
必ずしもアナフィラキシーが出るわけではないが、刺された時の事を考えて行動することも大切です。お気をつけ下さい。
コメント