今回、日本ではあまりなじみの薄い低用量ピルについて調べてみましたので御覧下さい。写真は低用量ピルの第2世代であるアンジュ28と第3世代のマーベロン28です。当薬局では現在、1シート2200円の価格で調剤しております。
低用量ピルは、女性の生殖機能を司る卵胞ホルモンと黄体ホルモンの2つが含まれ、これにより排卵を抑制する。避妊の機序は、?排卵の抑制、?子宮頚管粘液の性状の変化(精子の子宮内侵入を抑制)、?子宮内膜の変化(受精卵の着床抑制)である。排卵後の女性の体の中では黄体ホルモン(プロゲステロン)が作られます。プロゲステロンは、排卵後や妊娠中に多くなるホルモンです。性周期の初期からピルとして黄体ホルモン剤を摂取すると、妊娠しているのと同じようなホルモン状態が作り出され、排卵が起きません。これがピルの基本原理です。一般にピルといわれている薬には、黄体ホルモン剤と卵胞ホルモン剤の両方が含まれています。2つのホルモン剤が含まれているので、混合ホルモン剤といわれます。混合ホルモン剤として使用するわけは、同じ用量でも単体で使うより効き目が強くなるからです。この基本原理からすれば、黄体ホルモン剤を摂取すれば避妊効果があるということになります。正しく服用した場合、妊娠の確率は避妊手術や子宮内避妊用具 (IUD) 装着と同じレベルの避妊効果が期待できます。避妊以外にも、生理周期の変更や月経困難症(生理に伴う重い症状や大量の月経血)の緩和、子宮内膜症の治療などに使われます。かつては中用量ピルが用いられていたが、副作用のリスクの低減を目的として低用量ピル、超低用量ピルなどが開発され、海外では主流となっています。日本では治療目的の中用量ピルが認可され、1998年に避妊目的の低用量ピルが認可されたが、超低用量ピルは未認可のため、避妊用としては低用量ピルが主流になっています。
低用量ピルは含まれる黄体ホルモン成分の種類で第1〜第3世代ピルに分類されます。1960年代にはノルエチステロンが開発され、ピルが経口避妊薬として使用されるようになりました。これが第1世代ピルです。第1世代ピルの黄体ホルモン剤は作用が弱いので多くの卵胞ホルモン(エストロゲン)の助けを借りていました。卵胞ホルモンが多いと、血栓症、乳がん、子宮頸がんのリスクが高まるという報告や、肝障害などの副作用が報告され、WHOは卵胞ホルモン量を50μg未満にするように勧告しました。そこで、卵胞ホルモンを50μg未満に抑えた低用量ピルが開発されました。卵胞ホルモン剤を50μg以下に抑え、代わりに黄体ホルモン量を増やして出来たものが第1世代低用量ピルです。その後、卵胞ホルモン剤を50μg未満に抑え、なおかつ黄体ホルモン活性の高い製剤であるレボノルゲストレルという第2世代の黄体ホルモン剤が開発された。第2世代ピルは低用量の黄体ホルモンでも、しっかり効き目がある画期的な製品でした。ところが、第2世代の黄体ホルモン剤には思わぬ弱点が潜んでいました。男性化症状(アンドロゲン作用)の問題です。この問題を克服するための1つの方法は、2相性ピルや3相性ピルにして黄体ホルモン量を段階的に変化させることでした。第2世代並の効き目があり、男性化症状を抑えるデソゲストレルやゲストデンという新しいタイプの黄体ホルモン剤が開発されました。第3世代ピルは第2世代ピルが代謝されていく過程に注目し、アンドロゲン作用が生じるのを防ぐことに成功しました。これを用いたピルが第3世代低用量ピルです。第1世代ピルではどうしても、黄体ホルモン量が多めになる傾向があります。しかし、アンドロゲン作用が少ないことから、マイルドなピルとして根強い人気があります。ピル発祥の国アメリカでは、第1世代ピルが主流となっています。第2世代ピルは、本格的な低用量ピル時代をつくったピルです。黄体ホルモンの効き目が強いことを生かして、黄体ホルモンの総量が低く抑えられています。非常によく工夫された3相性の形を取ることが多く、欠点を抑え長所を生かすことに成功しています。しかし、メリハリがかえって負担になる方やアンドロゲン作用に敏感な方もいます。第3世代ピルは、第1世代ピル第2世代ピルの弱点を克服していて、またたく間に世界中の女性の支持を得ました。第3世代ピルは、最も副作用の少ないピルとして普及していきましたが、血栓症を引き起こす危険性が第2世代ピルと較べて高いという報告がなされました。
ピルは、黄体ホルモン量の変化により、1相性ピル、2相性ピル、3相性ピルに分かれます。1相性ピルは、21錠の成分が皆同じものです。日本で認可されている低用量ピルの中では、マーベロンとオーソMが1相性ピルにあたります。中高用量ピルはすべて1相性です。また、近年海外で発売されている超低用量ピルも1相性です。1相性ピルは生理日の調整に便利なことから、ベテランユーザーの間で人気が高いようです。また、避妊効果がより高いと考える人もいます。欧米では60%が1相性ピルです。2相性ピルは、ホルモン成分が2段階に変化します。日本で認可されている低用量ピルの中では、 エリオットが2相性ピルに当たります。エリオットでは、後半の黄体ホルモン量が前半の2倍になります。自然のホルモン変化に最も近い形と言えば、エリオットが一番です。3相性ピルは、ホルモン成分が3段階に変化します。変化のさせ方は製品によって異なります。オーソ777は、卵胞ホルモン量は一定ですが、黄体ホルモン量が徐々に増加していきます。エリオットの前半と後半の間に第2相を入れることにより、ホルモン環境をなめらかに変化させようとしたものです。トライディオール・トリキュラー・リビアン・アンジュの4製品は、巧妙な組み合わせの3相性ピルです。第2相では卵胞ホルモンの量を増やし、第3相では黄体ホルモン剤の量を増やして、不正出血圧力に対抗させています。徐々にホルモン量を増やしていくというのが3相性ピルの基本的な考え方です。ところが、ノリニール・シンフェーズは、逆に第3相のホルモン量を第2相よりも少なくしています。つまりホルモン量を凸字型に変化させているわけです。これは休薬期間の早い時期に生理を起こさせる目的からです。注文どおりに行くこともありますが、生理が早く来すぎてしまうこともあるようです。
副作用は個人差がありますが、製品のホルモン量による違いもあります。卵胞ホルモン(エストロゲン)は、血栓症・乳がん・子宮頸がん・肝障害などのリスクを高めることが知られています。また、ピルを服用し始めた際にしばしば見られる、吐き気・頭痛・下痢・むくみ・おりものの増加・経血量の増加・血圧上昇なども、卵胞ホルモンの作用によるものです。低用量ピルでは、このような副作用は卵胞ホルモンの量に比例して強くなるため、卵胞ホルモンを低用量化(50μg未満)する必要がありました。黄体ホルモン剤(プロゲステロン)は、倦怠感・抑うつ感・乳房の張り・PMS的症状・性欲低下・経血量減少などの副作用をもたらすといわれています。卵胞ホルモン(エストロゲン)の副作用に較べると、耐え難い副作用でないといえるかもしれません。経血量の減少などは、むしろプラスの作用であるとも言えます。
副効用は、副作用と同様に個人差が大きく、誰にでも現れるものとは限らない。しかし、副効用を目的として処方されることも多い。一般に多く期待されるのは、生理周期の安定、生理痛の軽減、経血量の減少など、月経に関する副効用である。また、子宮内膜症の予防・病巣進行の停止、子宮体がん、卵巣がんのリスク軽減なども期待できる。第3世代低用量ピルの抗アンドロゲン(男性ホルモン)作用を利用したニキビ治療、ムダ毛が薄くなる、黄体ホルモンの連続服用による乳房膨満でバストアップする等、美容に関する副効用もあるとされる。
低用量ピルではないが、同じ成分の薬剤を使うモーニングアフターピルは、「受精卵の着床よりも先に子宮内膜を剥がして生理様の出血を起こし、妊娠成立を阻止する」ために性交後に服用するホルモン剤のこと。事後ピルまたは緊急避妊薬とも呼ばれる。強姦被害や、コンドームの破損などによる不測の避妊失敗時に望まない妊娠から女性を保護する目的のものであり、避妊効果は万全ではなく、自然な状態ではありえない量のホルモンを採るため体への負担も重いので、安易な性行為のカバーとして用いるべきではない。日本ではモーニングアフターピルそのものは未承認で取り扱いがないが、適応外で使用する場合があるので、産婦人科で相談すれば処方してもらえます。使い方は、妊娠の危険を伴う性交渉後、72時間以内に1回目の中用量ピル2錠相当を服用し、その12時間後に残りの2錠を服用します。人によっては吐き気・頭痛など重い副作用がある。服用後3日〜3週間程度でまとまった量の出血が起こって子宮内膜が一掃されれば、緊急避妊は成功となる。
以上のように低用量ピルは、安全な避妊薬として使うことができます。日本では、医師の診察がなければ購入できないが、外国では風邪薬などと同じように、ある条件を充たしている薬局で購入できます。希望があれば婦人科の医師に相談して下さい。
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